紅い指

白く見えるこの両手は
本当は紅く紅く染まっているのだと
誰よりも私自身がよく知っている

ただ生きているだけで
私は多くの命を奪い
そのうえでただひたすら生きている

生きている目的と
生きている意義が
この私にあるのかどうか
それさえもわからないでいる

それでも私はこの空虚な身体を支える為に
この手を紅に染め
ただひたすら生き続ける

どこかに
私の代わりに死ぬものがいる

それは人間だけではなくて
物言わぬ小さき魂や
私より生きるべき存在なのかもしれない

それらを踏みつけてまで
私は生きる

ただこの地に生まれ出たが為に
私は汚れたまま生き続ける

もしも救いがあるのならば
私もまたいつか
誰かを生かすために死ぬのだろう
この手を取った誰かの為に

紅く染まった手で掴まれた指は
きっと同じく紅に染まる

それでやっと
私は私の役目を終えるのだと
私は私を信じている

この紅い手が
誰かを殺し
誰かを生かすものであると
ただ
祈るように信じている

ＢＡＣＫ