彼女の声は、雲を切り裂く光のように・・・・・・。

鏡に映る剣

五章


「公瑾様!」

厳しい目で軍備を確認していた公瑾は、この場で聞こえるはずもない声に、はっと振り返った。
その目に映ったのは、馬上の女性。
彼の、名ばかりの妻。

その声に反応するように茂みの中で何かがちかりと光り、公瑾は本能的に身構える。

一瞬のうちに行動が重なった。

茂みから射られた毒矢は、馬から公瑾に向かって飛び降りた季鏡の肩を貫く。
その一瞬後に、公瑾は腕の中に崩れ落ちた季鏡の手から懐剣を抜き、茂みの中の射手に正確に放った。
短い悲鳴と共に、足に懐剣を突き立てたまま、一人の男が茂みから転がり出てくる。
その男は、前々から公瑾が間者ではないかと疑っていた男たちの一人だ。
だが、今は・・・・。

「季鏡!」
「・・・公瑾・・・様・・・。ご無事・・ですか。」
「私のことより貴女です!馬鹿なことを!」
「・・・私より、貴方の命の方が重いですから。」

にっこり笑って呟き、季鏡はぐったりと目を閉じる。

「・・・間者は三人組の男です。騒ぎに・・・乗じて逃げると。
侍女に伯符様の元へ行くよう指示しましたから・・・・すぐ捕まるかと思いますけど・・・。」
「いいから、もう話さないで!」

男の持つ矢を見て、毒矢だと気付いた公瑾は顔色を変えて、季鏡を抱き上げる。

「すぐに軍医を呼びますから。」

「公瑾!」
「季鏡!季鏡っ!」

最後に感じたのは、伯符と梨鏡の叫びと、蒼白な公瑾の暖かなぬくもりだった。

次章



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