蒼竜の巫女
〜四章〜 「面白いものが手に入ったのですよ。」 ある日の午後、 姫水を呼び出した流藍はそう言ってあるものを手渡した。 それは、蛤の貝殻で出来た貝合わせ。 綺麗な細工と彩のそれは、 五竜の母、糸姫が送ってきた物だという。 五竜の中で最もこういう細工物を好む流藍の元には、 年に何度か母からこういった贈り物が届く。 「これは飾っておくより遊んだ方が楽しいですからね。 紫姫とでもお使いなさい。」 そう言ってそれを渡された姫水は、 流藍に気付かれぬように眉を顰めた。 いつもそうだ。 流藍は優しい。 でも、それは妻に対するものじゃない。 弱くて小さな子供に対するものと同じ。 十五で湖に入った時から、 流藍の態度は変わらない。 彼にとって自分は庇護すべき小さな娘でしかないのだ。 力が欲しい。 あの人と対等な目線でいられるくらいの力が。 どれだけあの人を愛しても、 力のない自分には何も出来ない。 姫水はそれが悔しくて唇をきゅっと噛み締めた。
三章
五章
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