蒼竜の巫女
〜五章〜 力が欲しい。 せめて、もう少しだけ。 思いつめた姫水は、 独り、黒竜の城の書斎にいた。 紫姫に許可を取って訪れたここには、 黒竜の集めた古今東西の書物が天井まで並んでいる。 ここなら、何か、自分の力を増す方法がわかるかもしれない。 五竜の世界には大抵のものがある。 だから、もし、何かを飲んだり使ったりすることで力が増すのなら、 それを試してみようと姫水は思った。 黙々と本を捲り続けて、 書斎の四分の一ほど制覇した頃だろうか。 姫水は一冊の古びた書物を棚の奥から引っ張り出した。 それは、竜についての古い伝承が多く書かれた本。 くだらない戯言も、隠し切れない真実も、 ごちゃ混ぜに書かれているヒトの手による書物。 その中に、『竜の鱗』についての記述があった。 曰く、『竜の鱗を剥がし、身につければ、その者には強い力が宿る』と。 竜の鱗。 契りの時は本性に近くなる五竜。 鱗など簡単に取れるはずだ。 それでなくても、竜の鱗はヒトの髪のように、 しばしば抜け替わるのだ。 姫水はその本を丁寧にしまうと、 決意を胸に秘め、黒竜の城を出た。 * その夜。 紫姫を伴って書斎を訪れた黒竜 雪解は、 棚にあった一冊の本を手に取った。 それは、昼間、姫水が読んでいたもの。 その本から姫水の気を感じ取って、 雪解は僅かに眉根を寄せた。 「紫姫。姫水は今日何をしに来たのだ?」 「ああ、なにか書斎で調べものをしたいって。 私は昼間はちょっと気分が悪かったものだから、 独りで調べられるように鍵を渡したのだけれど?」 ふわりと首を傾げた紫姫の、 その気分が悪かったという言葉に気を取られつつも、 雪解は無言で手の中の本を見つめた。 「何を、調べていたんだろうな?」 「・・・え?どうして?」 「いや、ちょっと気になるんだ。 嫌な予感がする。 今夜は・・・、何かが起こるかもしれない。」 「雪解・・・。」 こういう時の彼の勘は外れることがない。 憂いに満ちた表情の夫を見つめ、 紫姫は姫水を思って心配げに目を伏せた。
四章
六章
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送